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二 突然の訃報 |
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「会長の里谷です、この度はどうも」 それから、私達は隣の部屋で、手を合わせてから顔を拝見させていただいた。普段と変わらないとても安らかな表情だった。 相手は、義理の息子夫婦ということであったが、初めて見る顔であった。 他には、葬儀社の永田という男が来ていたが、会長とは良く顔を合わせている様子であった。 「こちらは、副会長の高井さんで、もう一人副会長の沢崎さんという方がおります。少し遅れてくると思いますが、よろしくお願いします」 それから、私が挨拶をすると、葬儀の打ち合わせに入った。沢崎は十分ほど遅れて来た。思い出の話も少し交えたが、打ち合わせは一時間ほどかかった。 外に出ると会長はつぶやいた。 「そうか、訃報も作らなけりゃならないな。いずれにして、我々の打ち合わせも必要だから。これから部屋に行こうか。哲夫、大丈夫だろう?」 「ああ、俺は良いよ」 彼は沢崎哲夫といって会長とは高校時代の同級生であった。会長は彼のことをいつもそのように呼んでいたが、町内の者は彼のことを親しみを込めて「哲ちゃん」と呼んでいた。 私も、二人と同じ高校の出身であったが、二人の四期後輩にあたる。だから高校で彼らと顔を合わせたことはなかった。 その先輩の沢崎であったが、私もいつの間にか彼のことを「哲ちゃん」と呼ぶようになっていた。面倒見がよくて気持ちの良い男であった。 部屋というのは、ホテルの社長室のことであった。会長はインターホンに向かって、コーヒーを持ってくるように告げた。やれやれという様子でソファーに腰掛けると、煙草を取り出した。そうして、三人の役割分担を確認した。 それから、早速会長は事務机に向かうと、訃報を作り始めた。私は、町内の主だったところに電話してお手伝いのことを頼みはじめた。 沢崎は、スケジュールをまとめながら、明日、明後日の段取りを再確認し始めていた。これからは、連絡係りの彼が一番大変になるはずだった。 プリンターから出来上がった訃報が吐き出されてくると、それを持って会長が、またソファーに戻った。そうして、三人がコーヒーに手をつけた。 「それにしても、ついこの間まで元気だったのにな」 会長が云った。 「そういえば、最後の行事がバーベキューだったけど、その時居なかったから。おやとは思っていたんですけどね」 そう云ったのは私だった。 「そうだよな、めったに町内の行事を欠席することなんかなかったからな。だから、逆に何か外せない用事でもあったのかと思っていたんだ」 沢崎が云った。 私も、欠席のことが少し気になってはいたが、実際のところ彼と同じように思っていたのだった。 「ところでさ、さっきの義理の息子さんていう人、里谷君は見たことあるのかい?」 沢崎が聞いた。 「うーん、さっきから気になって思い出そうとしていたんだけど、あの家には息子らしき人どころか、親類らしき人も訪ねてきたことはなかったような気がするんだけどな」 そう、会長が答えた。 「そうなんだよな。なにせ、清田の旦那は良く分からない人だったからな」 当時の私は東京に居て、すでにこの街には居なかったが、二人の会話の内容をおぼろげながらだけど理解することが出来た。 この街に戻って来てから、私が町内会の行事で飲んだりしているうちに、少しずつ皆と仲良くなって、自然と耳に入ってきた話をまとめるとこうであった。 あの家には、いつの頃からか二人が住むことになったそうである。ご主人は清田和彦という男であったが、人付き合いの悪い男であった。町内会費こそ払いはしたが、近所付き合いを一切しなかったそうだ。 だから、周りの住人にとっては謎の夫婦であったが、彼が腕の良い表具職人だったことだけは知られていた。 そうして、五年ほどしてから和彦が亡くなった、享年七十二歳であったそうだ。 当然のことながら、葬儀は町内会で面倒を見ることになった。そのことがきっかけとなって、清田の夫人は町内会に参加するようになった。そうして、皆はいつしか彼女のことを、清田のばあちゃんと呼ぶようになっていた。それとその時分かったことは、彼女は後添えであったことである。しかし、それ以上の立ち入った仔細を聞くわけにはいかなかった。 |
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