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第四章 風の中を
伸道が、話しかけた。
「達彦君、良い車に乗っているね」
「ありがとうございます。僕の趣味はドライブと、写真なもので」
「私も、若い頃は車に凝ったものだが、今はただ乗るだけになってしまった」
「最近は、私は何も分からないんだが、この車種は?」
「スカイラインです」
「おおそうか、これは昔私の友達が乗っていたんだ」
「当時は私も欲しくてしょうがなかったが、結局は乗ることはできなかったんだが。今は、会社の車だから」
「しかし、昔の頃とは随分変わっているようだな」
「そうらしいですね、でも僕はこの車が気に入っているんですよ」
その時、佳子が聞いてきた。
「写真は、何を撮っているんですか」
「僕は、ほとんど花ばっかり撮っています」
「というのは、ブログやってるんですが、花をテーマにしているんで、自然そうなってしまうんですよ」
「私がこちらに居たときから、好きだったんですか」
「いや、そうじゃないですよ、勤め初めてからです、いわば酒とともに僕のストレス解消かもしれませんが」
幸恵が話しに参加してきた。
「あら、達彦さんお酒のほうは強いんですか」
「そんなに強くはないですが、結構好きなほうです」
「ところで、IT関係の仕事に就いてると伺ったんですけど、どんな仕事をなさっているんですか」
「インターネット関係の仕事ですよ、何でもやるんですが、最近はお客様との折衝が多いですね、一般的にはセールスエンジニアと呼ばれていますが」
「それなら、東京へいらっしゃることもあるのではありませんか」
「そうですね、ネットで仕事がほとんど出来ますが、たまにはそういうこともあります」
「今度、時間が取れたら、ぜひうちに寄ってくださいな」
「佳子が居れば、イタリア料理を、居なければ私が、京都料理を振舞いますよ」
「え、佳子さんはイタリヤ料理をなさるんですが」
「佳子の親友に、遼子さんという方がいて、その方がとても料理が上手なかたなの、佳子はその方に教わったのよね」
「ええ、そうよ」
「でもなあ、佳子は早い持間に家に居ることが少ないものな」
伸道が言った。
「あらお父さん、そんなこといったら、達彦さんが、まるで私が不良娘だと、思うかもしれないでしょう」
「ああそうか、まあお前は友達が多いからしかたないか」
達彦は、そのやり取りを聞いて、佳子が二人からとても大切にされていることを感じ取っていた。あのときの、少女がいまここにこうして、一緒の場所にいることが、達彦には不思議なことに思えてしょうがなかった。
それにしても何という変わりようだ、羽化という言葉があるが、その言葉はまさに今の彼女の為に用意されているように達彦には思えた。そういえば、伸道たちが結婚式に出席している間は自分が佳子を、案内をすることになっていることに改めて気付いた。そんなに長い時間とはいえないが、二人きりになるということに気付いて達彦は、今日は最高の日曜日になると、そう思った。
達彦は自分の気持ちが高揚していることを感じた。
なにかを、どうにかしたい気持ちがあった。
「あのう、良かったら窓をあけませんか」
「一応エアコンは入れてありますが、外の空気の方が爽やかだと、思います」
「そうですか」
幸恵が、云った。
「ちょっと、音はうるさいと思いますが、六月の北海道は風薫最も気持ちの良い季節なんです」
「じゃ、そうしてもらおうかな」
伸道が云った。
「あらほんと、涼しいのね、佳子とても良い気持ちね」
幸恵が云った。
達彦が、バックミラー越に見ると、佳子は、風に髪を靡(なび)かせ、とても楽しそうに見えた。
車は、緑の中を疾走していった。
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