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第九章 ブログ
「お待たせ」
そういって、席に着いたのは遼子であった。
「遅いな、十分も遅刻よ」
「ごめん、ごめん、出る時に教授にひっかかちゃって」
「あなたのことだから、しかたないわね」
「何頼んだの?」
「コーヒーフロートよ」
「じゃ、わたしもそれにするわ」
二人が、居るのはお気に入りの喫茶店であった。二階の硝子張りの窓際の席はいつもの指定席になっていた。
道行く人々の姿が、上から覗くことができた。
「これ、北海道のお土産よ」
佳子が、差し出したのは北海道の代表的な菓子であった。
「ありがとう、旅は楽しかったんでしょ?」
「最高だったわ、食べ物も美味しかったし。ねえ、今度一緒に行こうか?」
「いいわね、本当に行こうね」
「いいとこ、案内するわよ」
「ところで、達彦さんにも会ってきたんでしょ?」
「ええ、会ってきたわ」
「ねえ、どんな感じだった?」
「正直、思っていたより感じはよかったわ」
「というより、本当はすごく良かったんでしょ、顔に書いてあるわ」
「まあ、そういえないこともないわ」
「また、とぼけるんだから、携帯番号とか聞かれなかった?」
「いいや、彼、意外と臆病なのかも」
「あらあら、そうだったの、で、あなたの気持ちはどうなの?」
「どうなのって?」
「付き合ってみたいとか?」
「そんなこと、思うわけ無いでしょ」
「ほんとかな?」
「今日は、なんか、絡むのね?」
「そんなことないけど、気にかかるの。どんな話をしたの」
「そんなに長い時間じゃないから、たいしたことは話ししていないわ」
「そうなの、でも趣味とか、友達のこととか話をしなかったの?」
「少しは話をしたわ、遼子のことも話をしたわ」
「どうだって?」
「すごく、行動的だなって、それに私に似ているっていったら、一度ぜひ見てみたいなって云ってたわ」
「何ていったの?」
「テニスは上手いし、映画や文学にも詳しい、料理はセミプロ級の腕前で、付き合いが広いって云ったの」
「なるほどね、それじゃ、凄い女だと思っているのね」
「嘘はないでしょ?でも、ちょっとおっちょこちょいだとか、見かけよりは乙女チックだとかは云ってないわよ」
「あら、気を使っていただいてありがとう、その他には?」
「写真とドライブが趣味だと言っていたわ」
「へえ、写真は風景かしら?」
「いいや、花が好きみたいよ」
「へえ、彼はロマンチストなのかな?」
「そういえば、ブログをやってるって云っていたよ、ブログの記事にするからと云っていたわ」
「あら、じゃブログの名前教えてもらったの?」
「ええ、確か『北の花蔓』だったわ」
「ブログ、見てくれとは云ってなかった」
「ええ、一度みてくださいとは云っていたわ」
「あらあら、それで見たの?」
「遼子知っているでしょう、私パソコン苦手なの」
「やっぱりね」
「やっぱりって何が?」
「私の感では、達彦さん、佳子に好意をもったら、絶対何かメッセージを残していると思うわ」
「ブログに?」
「そうよ、佳子もし、達彦さんが好意をもっていたら、付き合ってみる。それともそんな気全然ない?」
佳子は、困ったような顔をした。
正直、達彦には好意までは行かないまでも、ひきつけられるものが無いわけではなかった。だが、自分では、過去の思い出のことを含、めて、終わったことと考えていた。しかし、遼子の言葉には心が揺れた。それにしても、どうして遼子は、こうまで熱心にこのことに首を突っ込んでくるのだろう。そんなことを考えた。
遼子は、かつて、佳子から達彦との思い出の話を聞いたときから、どんな男だろうと、強く興味をひきつけられた。
勅使河原が佳子に好意を抱いていることは知っていた。けっしてそのことに、ちゃちを入れようという気はなかったが、佳子と引き合わせて見たいという気持ちを抑えることが出来なかった。それは、人の恋のドラマを見ている観客のような、すこし意地悪なキューピットの気分であった。
それに、遼子の知人にIT関係の人間はいなかった。どんな、仕事なのだろうかという興味もあった。
「とにかく、私、ブログを調べて見るから、いいね?」
「ええ」
佳子は、うなづいた。
「それより、どんなところへ行ったの、どんなもの食べたの?もっと教えて」
遼子の好奇心ははちきれそうであった。
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